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コラム

四季折々、わたしのテロワール

人は一日3回食事をする。その一つひとつの積み重ねがその人の体を作る。徳島の人は徳島の食材を食べることが一番体に合っている。ようにできている。

それは、徳島に限った事ではなく、人間もその地域の自然の一部であると考えればそうなのかもしれない。同じ作物を作っても、別の土地で作ると全く同じものはなかなかできない。

例えば祖谷のごうしゅいも。
祖谷で作るからあのしまった美味しいイモができる。他の土地で作っても同じようにはできないそうだ。地理的な条件、気候の条件、人の力では何ともしがたい絶対的なものがある。それがテロワールにつながる。

鳴門の金時芋。海に近く、潮風が通る環境でこそ美味しく育つ。レンコン、わかめ、鯛。阿南のたけのこ。佐那河内の米。藍住の人参。上勝のゆこう、阿波晩茶。神山のスダチ。上板の和三盆。しいたけ、カリフラワー。 徳島の恵は山からいただいたもの。山の恵みをたっぷり含んだ水は川となり肥沃な土を作る。とにかく水がきれいなことが、徳島の豊かさを支えている。吉野川流域の阿波町などの野菜は本当においしい。 また、山の恵は川を経て海の豊かさにもつながる。魚種は少ないが瀬戸内と太平洋が出あう海域にあり、それぞれの魚種を享受できる。また、渦潮の流れに鍛えられた鯛なども味わい深い。料理をした後、鯛の骨にコブがあると愛おしくなる。急流に揉まれて骨折しながらも生き抜いた、鳴門鯛の証。

この循環の中に人は生きている

森は海の恋人と畠山氏は唱えられる。森が滅びると海も滅びる。海を守るためには山を守る。この循環の中に人は生きている。

春にわかめしゃぶしゃぶを食べるために東京からくる友人がいる。湯に通すと鮮やかな緑色に変わり、新鮮なものほど美しい。その色と歯ごたえを楽しむためにわざわざやってくる。悲しいかな、日持ちがしないので配送してもなかなかこの新鮮さは味わえない。そしてちょうど美味しくなる鳴門鯛や、うるいやこごみ、かんぞう等の山菜とともにしゃぶしゃぶにするとご馳走になる。
また、東京の友人には通じない「ヨコ」という美味しい魚がある。クロマグロの幼魚で日常の食卓にもよく上る。安価で美味しい赤身が新鮮な状態で食べれるのは幸せなこと。
通じない魚といえば、ぼうぜという魚も美味しい。秋祭りのご馳走として、姿寿司にすることが多いが、淡白な白身魚だ。酒盗に漬けこんで焼くと、マナガツオのような味わいがする。唐揚げにしても、ジャガイモに包んでガレットにしても美味しくいただける。

上勝、ここはテロワール天国

夏に阿波晩茶を作りにくる友人がいる。上勝の山の中、真夏の日差しの中、1㌔痩せる覚悟で茶摘みに臨む。7月の土用。夏の日差しをたっぷり浴びた肉厚の茶葉を、枝ごとしごいて葉を摘む。それを釜茹でし(!ここがポイント!)揉捻する。昔は舟形茶すり機など人力で茶を揉んでいた。そして大きな木桶に詰め(‼ここもポイント!)茹で汁をたっぷり注ぎ芭蕉の葉で蓋をして熟成させる。2~3週間の桶漬けを経て天日干しされた晩茶は、少し酸味があり、暑い夏に飲むと何とも言えない清涼感がある。

木樽に漬け込む作業。ブクブクと気泡が出て生きているようだ


古から受け継がれた木桶に、空気に、住み着いている菌がその味わいを決める。生産者によりこれほど味わいが違う農産品はあるだろうか?というくらい全く違う。酸味・風味・まろやかさ・・。ここはテロワール天国だと思う。上勝を訪れて生産者ごとにお茶を飲み比べるのも楽しい。また、スダチを浮かべたりしてバリエーションを楽しむのも一興。

和菓子店では、阿波晩茶わらび餅という隠れた逸品もある。友人曰く、晩茶を毎日飲むようになって、すこぶる体調が、肌の調子が良いとの事。毎年1年分の晩茶を確保して帰ってゆく。

上勝の晩茶は茹でる

あまり知られていないが、日本茶のほとんどが不発酵茶である中、日本には3つの発酵茶(正確には後発酵茶)があり、その一つが阿波晩茶である。あとの二つは高知の碁石茶・愛媛の石槌黒茶。全て四国に存在するところが興味深い。その栄養効果が近年注目され研究対象にもなっている。

夏といえば、鱧。母から話を聞くと、鱧はいつもフライにして食べていたという。湯引きや照り焼きも美味しいが、やはり鱧鍋は外せない。ここだけは淡路の玉ねぎに限るが、たっぷりの玉ねぎを濃い目に味付けしただしで煮込み、玉ねぎの海の中で鱧をしゃぶしゃぶする。具材は、玉ねぎと鱧だけ。この組み合わせが私のお気に入りだ。

和三盆を頑なに竹糖にこだわる生産者がいるおかげ

冬になると竹糖の収穫作業を見に行く。和三盆は従来竹糖を原料として作られた。口に含むと切ないほどにほろっと溶けて消えるはかない干菓子。そのくちどけの良さ、上品な甘さに心が和む。現在は沖縄品種の砂糖キビを原料とするのが主流な中、頑なに竹糖にこだわる生産者がいる。竹糖は沖縄の気候に耐えうる砂糖キビとは違い細くて短い。成長も緩やかなため味わい深いものができる。

遊山箱に入れた手作り和三盆


この希少な品種を守り、育て、除草し、刈り取りも人の手で、大切に大切に作られた和三盆糖。干菓子になるのは気が抜けるほど簡単だった。材料は水と和三盆糖だけ。適度な湿気を加えて木型に塗り込む。ひっくり返して転げ出た愛らしい干菓子の姿に歓声が上がる。

私は栗きんとんを作るときは和三盆糖を使う。また、ヨーグルトにかけたり苺にかけたり 紅茶に入れたりして、贅沢なひとときを過ごすのがお気に入り。いつも、あの荒野で黙々と、生き生きと働く若者達の姿を思い出しながら。

冬の竹糖、収穫作業

テーブルコーディネーター(島内陽子)

大学卒業後、東京でテーブルコーディネートを学びディプロマを取得。1999年よりテーブルコーディネートスタジオON THE TABLEを主宰。テーブルコーディネートスクールをはじめ、ディスプレイやフードスタイリング、セミナーやパーティプランニングなど食に関わる様々な分野で活躍中。東京ドームで開催されるテーブルコーディネイトフェスティバルにおいて徳島県産品を生かした食空間の提案にも力を入れている。

島内陽子

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