故郷の「かきまぜ」
「かきまぜ」と聞いてどんな料理をイメージするだろうか?
一般には「ばら寿司」と呼ばれるものだが、私の故郷である徳島県那賀町では「かきまぜ」と呼ぶ。この呼び方は徳島県全域ではなく、地域によって「まぜくり」「五目ずし」「かきまぜ」「おすもじ」「いのこずし」などとも呼ばれるそうだ。
この呼び名にまつわるエピソードがある。私の妻が初めて実家に来た際、母が「今日の晩ごはんはかきまぜにする」と言った。すると妻は、「何をかき混ぜるの?」と不思議そうな顔をした。ちなみに妻は小松島市の出身で、「かきまぜ」という言葉には馴染みがなかったのだ。

興味深いことに、農林水産省のホームページ「うちの郷土料理」でも「かきまぜ」という言葉が登場するが、それはお隣・香川県小豆島の「まぜごはん」のことを指している。同じ名前でも地域が違えばまったく別の料理を指すことがあるのは、日本の食文化の奥深さを感じさせる。
金時豆が名脇役
私の故郷の「かきまぜ」の特徴は、柚子酢を使うことだ。すし飯には柚子の酸味がよく合い、爽やかな風味が広がる。具材としては、こんにゃく、ちくわ、にんじん、ごぼうなどが入り、特に金時豆が加えられるのが特徴的だ。この金時豆入りの寿司は県外の人にとっては珍しいらしく、話のネタになることも多い。ちなみに、お好み焼きに金時豆を入れた「豆玉」(「豆焼」「豆天玉」とも言う。)も徳島名物だ。

徳島がぎゅっとつまった金時豆入りの「かきまぜ」は、私にとってなじみ深い味であり、故郷の思い出とともにある。産直市や徳島県内のスーパーでも手に入る素朴な味をぜひ。