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コラム

私の阿波ふうど、風土とあいまったうまいもん

徳島は食材の宝庫だ。すだちは言うに及ばず、春にんじん、カリフラワー、しいたけなどトップシェアを誇る野菜から、エディブルフラワーまで幅広い食材が身近に手に入り、阿波牛や阿波とん豚、阿波尾鶏など自慢のブランド肉に加え、最近はジビエも人気。近海で捕れる少量多種の魚は練り物としても上手く活用されてきた。

釜揚げにすだち、漬物にすだち。さわやかな酸味は夏の食卓に欠かせない

こうした食材の真価を味わうには、その土地の食べ方で、旬を逃さず食べるに限る。郷土料理というほど県内全域に広まっていないので、長い間徳島で暮らしていても「食べたことがない」、「まったく知らない」という人も多い、風土とあいまったうまいもんをいくつか紹介したい。


まずは「わかめのしゃぶしゃぶ」。鳴門の天然わかめの美味しさはよく知られているが、出始めの頃の柔らかいわかめのしゃぶしゃぶは、徳島グルメつかみの一品。

さっと出汁にくぐらせ、翡翠色に変わる様子は手品のようなインパクト。しこしことした歯ごたえも美味で、すだちやゆずを使った自家製ポン酢などでいただくと、県外からの旅行客はみんな、目を丸くして食べている。

それから、私もまだ食べたことのない幻のスイーツ(?)が、柿餅。渋柿ともち米を蒸して作る餅で、「甘くてめっちゃ旨い」と聞いてから、いつか食べてみたいと思っているが、まだ巡り逢えていない。11月頃、那賀町の農産物直売所あいおいでのみ販売されているそうなので、その時期になると直売所へ行ってみるのだが、11月ならいつでも買えるわけでもなく、個数も限られているので、なかなかありつけないでいる。

那賀町の郷土菓子といえば、「はんごろし」(写真)。はんごろしも柿餅も『ビーンズあい』で作っている。

他にも椿泊で、阿南漁業協女性部の方達に作ってもらった漁師飯も忘れられない。その取材で初めて「沖なます」を食べた。鰹やヨコ(マグロの幼魚)の身をあぶって丸めた団子で、味付けは塩のみ。一口いただくと、ヨコの旨みが口いっぱいに広がり、衝撃的な美味しさだったと記憶している。

漁師飯の取材で作ってもらった「沖なます」。ヨコの短冊の表面をあぶって、身をほぐし、塩をして丸める。

徳島県南部は高知と同じように鰹もよく捕れるので、こんな風にして食べるのだと教わった。椿泊では結婚のお祝いに鯛の姿寿司を作るという話も聞き、小ぶりの鯛を使い、目玉のところに小豆をさし、それを重箱一杯に詰めて仕上げる、とってもおめでたい、華やかな料理と聞いて、みんなでお重を囲む幸せな風景が目に浮かんだ。

こうした地域の食のストーリーもまた、ごちそう。地域を知れば、さらに豊かな阿波ふうどの世界が広がるはず。


阿波ふうどスペシャリスト、ライター(飛田久美子)

地元タウン誌の編集長を経て、2013年にフリーのライター兼編集者に。これまで蓄えた地域情報やネットワークをいかし、現在は徳島県移住コンシェルジュとして、UIJターンの促進や空き家の利活用のPRに尽力している。

飛田久美子

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